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事例で見る人間力

第4回 オリンピックの勝利は人間力の勝利「浅田真央とキム・ヨナ(3)」

キム・ヨナは2重構造のトップ・センターが通っていることで、五輪という場を超越していた

しかし、浅田真央選手のDS図キム・ヨナ選手のDS図と比べてみてください。キム・ヨナ選手も、トップ・センターが1本、浅田真央手と同じ位置に通っていますが、しかし浅田真央選手よりも完成度が高く通っているのです。なおかつ私は、それを取り囲むように筒状のトップ・センターがあることも洞察しました。つまり2重構造のトップ・センターが通っているということなのです。

キム・ヨナ選手の身体の中心に通っている1本のトップ・センターは、その高さも、深さも見事なものです。それが彼女の精神的なブレなさというものを支えていることは明らかです。また、そのトップ・センターの高さ、深さから、このオリンピックという場をはるかに超越、超絶した心境をもたらしていたということも明らかです。この辺りのことについては、皆さんに振り返ってそのときの競技を思い出していただければ、あのときの彼女の態度や表情、パフォーマンスから「そうだよな、なるほどね、オリンピックという場を超越していたよな」ということが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

実際に識者の書いた記事を読んでみても、「よほど鍛えられてきた選手でも、一つや二つは必ずミスするものです。それがオリンピックという、あのとてつもない威圧的な環境の特徴なんです。それにもかかわらず、キム・ヨナ選手はまったくそれを超越していた。一切のミスがなかった。このことは考えられない話だ」というような主旨の記事を書いている人もいます。じつはこのようなことは、強烈なほどまでに見事なトップ・センターが通ることで初めて成せる業なのです。

そして、さきほども申したように、その中心に通っている1本のトップ・センターを取り囲むようにして、さらに筒状のセンターが1本通っている。これはいわば中が中空、中抜けの状態になっているセンターなのですが、じつはこれが様々に訪れる外界からの情報や関心などから本人を守ってくれているのです。考えてみれば、その戦いの場に向かって世界中の注目が一身に集まるわけですから、その外からの情報や関心の量や強さたるや異常な状態なわけです。そういったものに多くの選手は、心を乱され動揺し、たとえトップ・センターがある程度通っている選手でも、それを切り崩されていくものなのです。

しかし、外界から来る不定要因から本人を守ってくれるのが、中心にあるトップ・センターのまわりを取り囲んでいる、この筒状のトップ・センターなのです。この筒状のトップ・センターによって守られることで、その中心を通る一番細いトップ・センターは、それ自身が持っている構造・機能を十全に果たすことができるのです。別な言い方をすると、この筒状のトップ・センターが屹立することで、まわりから来る様々な情報的な障害に対して、「我関せず」という態度、つまりケロッと平気でいることができ、芯にマイナスの情報が響いてこないということが起きてくるのです。この筒状のトップ・センターの特徴は、中空、いわば芯が抜けているということなのですが、芯が抜けていることで精神的にマイナスの影響が“芯まで響かない”という機能が生まれるところに、この身体意識の構造機能の面白みがあると、考えてください。

浅田真央のトップ・センターは、クォリティが首尾一貫していなかった

一方、浅田真央選手の方はどうなっていたかというと、ちょうどキム・ヨナ選手と同じ位置にトップ・センターが通っています。フィギュアスケートの選手として頂点を極めるような二人ですから、見事に同じ位置にセンターが通るというのは、これも考えてみれば当然のことなのかもしれません。ところが、キム・ヨナ選手のトップ・センターが一つのクォリティ、非常に冷静かつ高雅で、質の高いクォリティで全体的に統一されているのに対して、浅田真央選手のそれは上から来て、ちょうど首を抜けて胸にさしかかるところまではキム・ヨナ選手と同じクォリティを持っているものの、そこから下は、キム・ヨナのトップ・センターの質に比べると、重くて固いのです。さらに、そこに熱性の中丹田を形成するとちょうど都合のいいような熱性のクォリティも、からんできてしまっているのです。

世の中に「首尾一貫する」、「通貫する」という言葉がありますよね。浅田真央選手のトップ・センターの形状は、天地をずっと通貫しているんですよ。しかし、クォリティが首尾一貫していない。クォリティが場所によって変わってしまっているのです。その結果、首尾一貫、通貫したパフォーマンスが、でき切らないということが生じてきてしまったのです。

フリースケーティング4分間全体の最初に持ってきたトリプルアクセルについては、気持ちの上での集中度や予定調和性、そこへめがけて行くぞという意志や意識が統一されていることで、このクォリティのトップ・センターでもなんとかやり切れるのです。だから彼女のトリプルアクセルを成功させる支えにはなったのです。しかし一方で、全体を含めて4分間を首尾一貫したパフォーマンスを通貫させるほどの軸になり得たかというと、なり得なかったのではないかというのが、私の見立てなのです。

キム・ヨナはバンクーバー五輪本番に向かって、この内容の身体意識を育てる方向に着々と進んできた

次に上丹田を見ていきましょう。キム・ヨナ選手の方が上丹田が見事に形成されています。おそらくキム・ヨナの身体意識というのは、2009年全体をこのバンクーバー五輪本番に向かって、この内容で育てる方向に着々と進んできたのだと思います。それに比べると、浅田真央選手はご存知の通り、グランプリシリーズのフランス大会やロシア大会で見せたような大スランプ状態が想像させたように、このオリンピック本番での身体意識の形成も、キム・ヨナ選手に比べるとはるかに劣る水準に留まりました。さらにいえば、フランス大会やロシア大会のときの彼女の身体意識は、バンクーバー五輪のときよりもずっとひどくて、おそらくはほとんどグチャグチャな状態だったのではないでしょうか。それを一気に立て直して、あそこまで持ってきたのです。これはたいへんに困難で素晴しい努力と評価できることです。

しかしそれでも、やはりキム・ヨナ選手の上丹田には及んでいなかった。当然、これはコーチの影響もあるでしょう。しかし一方でいえば、これほどまでに上丹田の差が出てしまうと、選手本人を含めたオリンピックへ向かう全体の流れを、どう大所高所に立って認識していくか、そしてどのように行動していったらよいのか、またどんなふうに自分の気持ちを整理し、本番のパフォーマンスを演じたらよいのか、というようなことに対して正解をもたらすような洞察や思考、判断を行うときには、きわめて大きな差が出てしまうものなのです。コーチの影響もさることながら、結局、最終的には自分がどう納得するかが肝心なわけですから。

第5回 「浅田真央とキム・ヨナ(4)」最終回へつづく>>

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