人間力開発講座

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事例で見る人間力

第3回 オリンピックの勝利は人間力の勝利「浅田真央とキム・ヨナ(2)」

二人の背はほぼ同じななのに、キム・ヨナの方が圧倒的に大きく見えたのは

というのは、さきほど括弧にくくって置いておくといった話に繋がってくるわけですが、トリプルアクセルの基礎点というものを、仮にありえないほど大幅に4点上げたとしても、フリースケーティングでの浅田真央の演技は4点の2回分、つまり8点分しか上がりません。キム・ヨナとの得点23.06点差というものを考えてみれば、それは到底及ばないものだということは明らかなのです。

そのことを一度ふまえた上で、もう一度前の話に戻って考えてみましょう。それぞれのジャンプ自体におけるパフォーマンスの質がどれほど優れていたか、あるいは劣っていたかという観点から、彼女たちのパフォーマンスを様々な角度から眺めてみると、圧倒的にキム・ヨナが優れていて、一方の浅田真央が及ばなかったという事実が改めて見えてくるのです。

そして、スケーティングそのものについても、キム・ヨナに対し浅田真央はまったく及ばなかったのです。ということになりますと、芸術性も含めた構成点に話を向ける以前に、身体運動のパフォーマンスとして見ただけでも、浅田真央選手がキム・ヨナ選手に到底及ばなかったという事実が浮かび上がってくるわけです。

このことは、見かけの姿というわかりやすい話で指摘することもできます。試合をご覧になった皆さんはよく覚えておられると思いますが、キム・ヨナ選手と浅田真央選手がそれぞれフィギュアを演ずる会場に現れたときに、その姿が大写しになったところをご覧になりましたよね。そして、動き出すその様々なプロセスの中で、キム・ヨナ選手の方がずっと背が高いようには見えなかったでしょうか。じつは公式発表ではともに164cmということになっています。しかし、二人が隣同士に並んで立っている場面を私はいくつか見たのですが、浅田真央選手の方が若干背が高いようでした。私の見立てでは、浅田真央選手の方が2~3cmくらい高いのではないかと見ています。

もう一度話を戻すと、二人とも全く同じか、もしかすると浅田真央選手の方が若干背が高いにもかかわらず、競技会場での姿はキム・ヨナ選手の方が圧倒的に大きく見えたのです。このことは非常に大事なことを意味しています。

つまり、キム・ヨナ選手はたいへん身体がゆるんでいたということです。全身にある200以上の骨格、500以上の筋肉のそれぞれのパーツが、ゆるゆるにゆるんでいたのです。その骨格においてはもっとも考えられる限り各骨格同士の距離が広がり、それと相応するように筋肉もその状況に応じて考えられる限り最大に長く伸び切っていたのです。それに対して浅田真央選手は、各骨格同士の距離は縮まり、それと相応するように筋肉も縮んで固くなっていたという事実を、そのことから見て取れるわけです。

当然、浅田真央選手は身体が硬縮しているわけですから、骨格同士の動きは滑らかさを失い、身体全体の重心のポジションも不正確になりがちでした。手足の各関節が屈曲していたため、その結果として、重心が身長の割に全体的に低かったのです。そして、筋肉が最初から縮んでいるわけですから、筋肉の伸張、収縮の幅が狭くなるために、筋出力というものが各局面にわたって低下します。最後に一番大事な問題ですが、骨格、筋肉全体が収縮し、全身が固くなりがちな状態では、疲労の蓄積が急激に進み、競技の遂行途中における疲労回復力も、劇的に低下してしまうという事実なのです。

全身が固まると身体そのものが精神にとって邪魔をする抵抗勢力になってしまう

さらにもう1つ挙げておきましょう。身体がそういう状態にありますと、恐ろしいことに精神にとっては対抗する敵がキム・ヨナ選手ではなく、オリンピック独特といわれる威圧的な環境でもなく、それ以前に自分の身体そのものが、自分の精神に対して邪魔をする抵抗勢力になってしまうのです。

つまり、動きづらい全身200の骨格と全身500の筋肉が、身体を徹底的にコントロールして、無上に最高のパフォーマンスを遂行したい、という意志を持つ浅田真央選手の精神にとってみると、厖大な敵となって彼女の前に立ちはだかるということなんですね。

実際にその事実を根拠づけるような彼女自身のコメントがいくつも伝えられています。「途中で疲れが来た」、それから「トリプルアクセルの後、緊張が強くなった」という談話などです。この2つの談話についていえば、前者は身体が硬縮している状態から来る急激な疲労蓄積と、競技途中における疲労回復力の低下を見事に物語っていますし、後者は身体全体が硬縮している自体から来る緊張感を物語っています。

人は緊張というものを「身体の硬縮を感じることによって生ずる」というしくみを持っているのです。つまり、抽象的に精神的に緊張するだけではなくて、身体がそのときにどういう状態になっているかということに気付くことによって、緊張感が急激に増幅するということがあるのです。当然のことながら、浅田は自分のパフォーマンスの生命線であるトリプルアクセルを決めるポイントに向かって、それは非常に至難であるがゆえに、彼女の意識の大部分はトリプルアクセルのパフォーマンスそれ自体に向かっていたわけです。

一方、自分の身体がどういう状態なのか、ということについては意識を向ける余裕はほとんどありませんでした。しかし、トリプルアクセルを2つ決めた直後に、困難なパフォーマンスが終わってしまったことで、それまでトリプルアクセルに向かっていた意識が、向く対象を急激に身体に変えることになったのです。つまり、身体を感ずる余裕ができたわけです。その途端に身体で生じていること、つまり全身200以上の骨と500以上の筋肉が縮み上がっている事実に、初めて気が付いたわけです。

キム・ヨナは、人間力の根本のさらに大前提をなす「ゆるみ」において、浅田真央を圧倒していた

人間力といったときに、私どもは人間力の根本にあるもの、しかもその根本の中でもさらに基礎となり大前提となるものを、身体をベースとした心身共なる「ゆるみ」にあると、前々から主張してきました。

その事実を今回のバンクーバー五輪における浅田真央選手とキム・ヨナ選手の戦いに見ることができるのではないでしょうか。つまり、浅田真央選手は人間力の根本をなす、しかもその大前提である身体をベースにした心身共なる「ゆるみ」ということにおいて、キム・ヨナ選手に比べて圧倒的に不足していたということです。

一方、申し上げることもないでしょうが、浅田真央選手よりもはるかに身体が大きく見えて、全身がタラーンとした印象を持ち、本当に柔かくゆるみ切って、全てのパフォーマンスが滑らかで無理なく、いわば液体が滑らかに流動するかのような氷上での運動を達成したキム・ヨナ選手は、人間力の根本のさらに大前提をなす「ゆるみ」において、浅田真央選手を圧倒していたということになるのです。

  • 浅田真央のDS図
  • 浅田真央のDS図

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  • キム・ヨナのDS図
  • キム・ヨナのDS図

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人間力についてさらにご理解いただくために、専門的な認識方法を駆使して二人の戦いを掘り下げていきましょう。これが浅田真央選手とキム・ヨナ選手の身体意識(DS)図です。二人のパフォーマンスをもとに克明、正確に分析しました。

まず浅田真央選手から見ていくと、普通のスポーツ選手、たとえば国体に県代表として参加し、上位に入れるかどうかという選手からしてみれば、まぎれもなく圧倒的に優れている身体意識といえるでしょう。これは、オリンピックの金メダルを争うところまで来ていて、なおかつ本人が獲得した総合得点でも自己最高を達成した人のパフォーマンスを支えている身体意識ということを考えてみれば、至極当然のことともいえます。

この図を見ていくと、トップ・センターは通っていますし、上丹田、中丹田、下丹田もあります。「人間力開発講座 基礎編 ベースofベース」で取り上げる4つの根本装置を浅田真央選手は揃えていたということがいえるわけです。逆にいえば、それが揃えられていなければ、あそこまでのパフォーマンスを見せることは、決してできなかったわけです。

第4回 「浅田真央とキム・ヨナ(3)」へつづく>>

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